排出量取引の2026年度からの対象と、設備投資の順番の決め方
公開 2026-10-19
製造業の会社で、工場の設備や生産技術を受け持つ技術の部署(以下、技術部門)の部長・課長が、経営企画の部署から次のように頼まれたとします。「排出量取引の移行計画(会社が毎年国に出す、CO2を減らす計画)を、2027年9月末までにまた国に出す。1回目の移行計画は2026年9月末に出した。設備投資計画の欄に書く削減策と金額、その時期を、工場ごとに出してほしい」。
排出量取引は、国が2026年度に始めた制度です。対象は、自社の工場などから直接出すCO2が、前の年度までの3年度の平均で年10万トン以上の会社です。2026年度なら、2023〜2025年度の平均で見ます。対象の会社は、毎年、出したCO2と同じ量の「排出枠」を持たなければなりません。排出枠は、CO2 1トン分を1単位として、国が割り当てる枠です。移行計画の設備投資計画の欄には、どの工場で、どの削減策に、いくら投資し、いつ始めていつ終え、年に何トン減らすかを書きます。どの削減策の設備投資から進めるか(以下、設備投資の順番)を決めるには、設備を知る技術部門の答えが要ります。
対象の会社は、設備投資の順番を決めてから、稟議(投資の承認を求める社内の書類)に出します。そこまでに技術部門の答えが要るのは、次の3つの判断です。
- 工場のCO2を設備ごとに洗い出し、制度の対象になる直接の排出と、対象にならない間接の排出(買った電気や蒸気の分)に分ける。各設備が入る工程で、国が排出枠を割り当てる方式(国が定めた排出量の目標〈ベンチマーク〉を使うか、過去の排出量を基にするか)も確かめる
- 削減策ごとに、排出枠の過不足(割り当てられる排出枠から、持つべき排出枠を引いた量)を1トン良くするのにかかる費用を出して、国が定める排出枠の価格の目安と比べ、工事ができる時期も合わせて、順番の案を作る
- 技術部門が稟議に書く回収年数(投資した額を何年で取り戻せるか)を、排出枠の価格を1つに決めず、上限と下限の2通りで計算する
この記事を書いている株式会社Labz.(以下、当社)は、2026年10月16日に、3つの検索語でGoogle検索しました。検索語は、「排出量取引 2026 対象」「GX-ETS」(この制度の英語の略称)「排出量取引 製造業 設備投資」です。3つの検索の1ページ目に出た記事は、重なりを除いて23件です。このうち、本文を読めた18件を読みました。残りの5件は、本文を読み込めなかったページやPDFです。読んだ18件のうち、日経ビジネスの記事は、無料で読める冒頭だけを読みました。設備の更新の時期に合わせて設備投資の順番を付ける考え方は、18件のうち1件に書かれていました。排出枠の価格の上限と下限の目安を金額で書いた記事も、18件のうち5件ありました。けれども、削減策ごとに排出枠の過不足を1トン良くする費用を出し、排出枠の価格の上限と下限の目安と比べる方法を書いた記事はありませんでした。設備投資の回収年数の計算に、排出枠の価格を入れる方法を書いた記事もありませんでした。電気に替えるなど燃料の使用量が大きく減る削減策では、割り当てられる排出枠も減ることがあります。この点を、設備投資の順番の判断に結び付けた記事もありませんでした。読んだ範囲では、18件のどれにも、この記事が向けている読み手を表す「技術部門」「部長」「課長」という語は出てきませんでした。「稟議」という語も出てきませんでした。
この記事では、制度の対象と、対象の会社が毎年する手続きを確かめたうえで、上の3つの判断を順に示します。
排出量取引とは|2026年度から対象になる会社
根拠の法律は、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)です。制度は、2025年6月4日に公布された法律の改正で定められ、2026年4月1日に始まりました。国(経済産業大臣)は、対象の会社に排出枠を無償で割り当てます。対象の会社は、毎年度、自社が直接出したCO2と同じ量の排出枠を、期限までに持たなければなりません。排出枠が余った会社は売ることができ、足りない会社は買うことができます。
対象になるかどうかは、次の決まりで判定します。決まりは、経済産業省と、GX推進機構(制度の手続きのシステムや、排出枠を売り買いする市場を受け持つ機関)の資料によります。
| 決まり | 中身 |
|---|---|
| CO2の量 | 自社が直接出したCO2が、前の年度までの3年度の平均で年10万トン以上。2026年度は、2023〜2025年度の平均で判定する |
| 判定の単位 | 会社(法人)ごと。子会社や関連会社は、それぞれ別の会社として判定する |
| 数える排出 | 直接の排出(燃料を燃やしたり、製品を作る工程で出したりする、自社からの排出)だけを数える。間接の排出(他社から買った電気・熱・蒸気を使うことによる排出)は数えない |
| 数えるガス | CO2だけ。メタンなど、CO2以外の温室効果ガスは数えない |
判定は、毎年度、それぞれの会社が自分で行います。前の年度までの平均が10万トン未満の会社に、この制度の義務はありません。経済産業省は、対象になる会社を日本全体で300〜400社程度と見込んでいます。制度が対象とする排出の量は、日本全体の温室効果ガスの排出量の60%近くになる見込みです(経済産業省の2026年4月の説明会の資料)。
国は年度ごとに、排出枠の価格の目安として、上限価格と下限価格を定めます。2026年度は、排出枠1トンあたり、上限価格が4,300円、下限価格が1,700円です。経済産業省の説明では、上限価格は燃料を替える対策の費用の水準を踏まえた値です。下限価格は、いまの省エネの対策の費用に合わせた値です(2026年1月14日の説明資料)。
排出枠を売り買いする市場は、GX推進機構が2027年度の秋ごろに開く予定です(同じ説明資料)。最初の割当ては2027年11月末のため、2026年10月の時点では、排出枠の取引の価格はまだありません。
市場の価格は、必ず上限価格と下限価格のあいだに収まるわけではありません。ただし、価格が上がりすぎたときや下がりすぎたとき、また排出枠が足りないときの扱いは、法律で決まっています。
- 市場の価格の平均が、下限価格を下回る状態が続いたとき:GX推進機構が、市場から排出枠を買い入れることができる(GX推進法第117条)
- 価格が上がるなどして、市場で排出枠を買うことが難しい状態が続いたとき:国が告示すれば、対象の会社は、割り当てられた量を超えて足りない分について、上限価格で計算した額を国に納め、排出枠を持っているとみなされる(第40条)
- 期限までに排出枠を持たなかったとき:対象の会社は、負担金を国に納める(第41条)。負担金の額は、足りない量に上限価格と1.1を掛けた額。仮に2026年度の上限価格で計算すると、1トンあたり4,730円(どの年度の上限価格を使うかは、条文には書かれていない)
2027〜2030年度の上限価格と下限価格は、国が毎年度、前の年度の額を基に定めます(2026年3月30日の経済産業省の告示)。国は、前の年度の額を、3%と物価の上がり方の見通しを足した割合だけ上げた額を基にして、その年度の額を定めます。物価の上がり方の見通しには、国内企業物価指数(企業どうしで売り買いする物の値段の動きを表す指数)の見通しを使います。この見通しは、国が毎年閣議で決める経済の見通しに載っています。2031年度より後の額の基にする決まりは、この告示には書かれていません。
この記事では、2026年度の上限価格と下限価格(1,700円〜4,300円)を、排出枠の価格の幅として使います。
対象の会社が毎年すること|2026年度分の排出枠を持つ期限は2028年1月
対象の会社が毎年度することは、次のとおりです。下の表は、2027年度に割り当てられる分を例にした基本の流れです。2026年度分は特例で、表の後で述べます。出所は、経済産業省とGX推進機構のリーフレット「GX推進法に基づく排出量取引制度が開始します」2026年度版です。
| 時期(2027年度分の例) | 対象の会社がすること | 国(経済産業大臣)がすること |
|---|---|---|
| 2027年9月30日まで | 対象であることと、割当ての基になる量(生産量や過去の排出量など。下で述べる)を届け出る。移行計画を出す | 2027年11月末に、2027年度分の排出枠を割り当てる |
| 2028年9月30日まで | 2027年度に実際に出したCO2の量を報告する | 2028年11月末に、持つべき排出枠の量を知らせる |
| 2029年1月31日 | 知らされた量の排出枠を持つ。足りなければ、市場などで買う。国が認めたクレジット(省エネや再生可能エネルギーの導入などで減らしたCO2の量を、国が認めたもの。J-クレジットなど)を使って、持つべき量から、実際の排出量の10%を上限に差し引くこともできる | その排出枠を消す |
割当ての基になる量と、実際に出したCO2の量は、国に登録された確認機関の確認を受けてから出します。
2026年度は、初めての年度のため特例があります。割当ての基になる量の届出と割当てが、通常より1年遅くなります。2026年度に国へ提出したのは、対象であることの届出と移行計画で、期限は2026年9月30日でした。2026年度分の割当ての基になる量は、2027年度分と一緒に2027年9月30日までに届け出ます。2026年度分の割当ては、2027年度分と同じ2027年11月末です。2026年度に出したCO2の分の排出枠を持つ期限は、2028年1月31日です。
割当ての基になる量の出し方は、工程の種類で分かれます。国は、洋紙、セメント、高炉による製鉄、自動車など20の事業分野で、決められた工程に、排出量の目標(ベンチマーク)を定めました。例えば自動車製造業では、乗用自動車の車体(バンパーを除く)の塗装工程だけがベンチマークを使う工程です。ベンチマークは、国が定めた、生産量1単位あたりの排出量の目標です。ベンチマークの工程では、ベンチマークに、2023〜2025年度の生産量の平均を掛けて出します。工程によっては(ゴム製品の製造など)、生産量の代わりに燃料の使用量を使います。2026年度のベンチマークは、業種の中で排出の少ない上位50%の水準です。2030年度までの5年度で、上位32.5%の水準へ厳しくなります。ベンチマークを使わない工程では、2023〜2025年度の排出量の平均を基に出します。燃料を燃やして出る排出なら、割り当てる量を、その平均の1.7%にあたる量ずつ、毎年度減らします。同じ工場の中に、2つの方式の工程が混ざることもあります(経済産業省の2026年1月と4月の資料)。
移行計画に書く事項は、次のとおりです(2026年4月の経済産業省の説明会の資料による)。
- 前の年度のCO2の排出量(直接の排出と間接の排出)
- 2030年度までの各年度のCO2の排出量の目標(直接と間接)
- 設備投資計画の内容と期待する効果(投資の内容と金額、その投資をする工場、着手と完了の時期、年間に減るCO2の量)
- 研究開発の内容(2026年度の計画では書かなくてよい)
- その他の取組に関する事項(カーボンニュートラルに向けた戦略を書いた、会社の公表文書など)
- 前の年度の計画との比較(2026年度の計画では書かなくてよい)
国は、このうち1、2(2030年度の値だけ)、4、5を会社ごとに公表します。3の設備投資計画と、6の比較は公表しません。
排出量取引の対象の会社で、技術部門の答えが要る3つの判断
移行計画の設備投資計画の欄は、投資の内容と金額・工場・時期・削減量を書けば埋まります。けれども、設備投資の順番は、欄を埋めるだけでは決まりません。次の3つの判断には、設備の燃料、工事ができる時期、設備を更新する時期を知る技術部門の答えが要ります。
1. 工場のCO2を設備ごとに洗い出し、直接の排出と間接の排出に分ける
最初に、工場のCO2を設備ごとに洗い出します。制度の対象になる直接の排出は、燃料を燃やす設備から出るCO2と、製品を作る工程で出るCO2です。燃料を燃やす設備には、ボイラー、加熱炉、乾燥炉、自家発電の設備などがあります。製品を作る工程で出るCO2には、例えば、石灰石などの原料が熱で分解して出るCO2があります。電気や蒸気を買って動かす設備の分は間接の排出で、持つべき排出枠の量には入りません。
技術部門は、設備ごとに、次の6つを1枚の表にします。
- 使う燃料と、年間に出すCO2の量
- 直接の排出か、間接の排出か
- その設備が入る工程の割当ての方式(ベンチマークの工程か、過去の排出量を基にする工程か)
- 設置した年と、次に更新する予定の年
- 設備を止めて工事ができる時期(定期修理の時期など)
- 考えられる削減策(燃料を替える・電気で動く設備に替える・捨てている熱を回収して使うなど)
表の1と3は、工場のエネルギーの使用量を集計し、国への届出をまとめている部署の資料で分かります。2と4〜6は、設備を受け持つ技術部門が答える欄です。
表の2つ目と3つ目の区分は、削減策の効き方を正しく数えるために要ります。同じ削減策でも、持つべき排出枠の量と、移行計画に書く排出量とでは、減り方が違うことがあるからです。例えば、燃料を燃やす加熱炉を電気の炉に替えると、直接の排出は減り、持つべき排出枠も減ります。一方で、買う電気が増えるため、間接の排出は増えます。移行計画には直接と間接の両方の目標を書くため、削減策ごとに、両方の増減を並べておきます。
さらに、削減策によっては、割り当てられる排出枠も減ります。経済産業省の実施指針(割当ての決まり)には、次の決まりがあります。当社が、実施指針の意見公募の段階の案と、その結果の公表で確かめた内容です。
- 過去の排出量を基にする工程と、燃料の使用量を使うベンチマークの工程:燃料の使用量が、割当ての基にしている年度より7.5%以上減ると、生産が減ったものとして、割当てを減らす(減らす量の計算も実施指針に決まっている)。ただし、エネルギー消費原単位(生産量あたりのエネルギーの使用量)が、割当ての基にしている年度より7.5%以上良くなっていれば、減らさない
- 電気炉で鉄鋼を作る工程(ベンチマークの工程の一部):ベンチマークに生産量を掛けた量に、もう1つの数を掛けて割り当てる。掛けるのは、前の年度の排出(直接と間接の合計)のうち、直接の排出が占める割合。電気に替えて直接の割合が下がると、翌年度の割当ても減る
例えば、電気炉で鉄鋼を作る工程で、直接の排出が80トン、間接の排出が20トンだったとします。ベンチマークに生産量を掛けた量は100トンとします。直接の割合は80%なので、割当ては100トンの80%で80トンです。燃料を燃やす設備の半分を電気に替えて、直接の排出が40トン、間接の排出が50トンになったとします。直接の割合は約44%(40÷90)に下がり、翌年度の割当ても100トンの約44%で約44トンに減ります。直接の排出は40トン減っても、余る排出枠は、0トンから約4トンに増えるだけです(数字は説明のための仮の値。ベンチマークと生産量は変わらないとした)。
削減策ごとに、割当てがどう変わるかを確かめてから、2つ目と3つ目の判断に進みます。確かめる先は、国の実施指針と、経済産業省が公表している割当ての計算のマニュアルです。
2. 削減策を、1トンあたりの費用と、工事ができる時期で並べる
次に、技術部門は、削減策ごとに、排出枠の過不足を1トン良くするのにかかる費用(以下、1トンあたりの費用)を出します。金利を考えない簡単な出し方は、次のとおりです。
1トンあたりの費用 =(設備の投資額 ÷ 設備を使う年数 + 毎年の運転の費用の増減)÷ 排出枠の過不足が毎年良くなる量
排出枠の過不足が毎年良くなる量は、直接の排出が減る量から、その削減策のために割り当てられる排出枠が減る量を引いて出します。運転の費用の増減には、燃料代や電気代の増減を入れます。運転の費用の減る額が、設備の投資額を年数で割った額より大きい削減策では、1トンあたりの費用はマイナスになります。
出した費用を、2026年度の上限価格と下限価格と並べます。
| 1トンあたりの費用 | 排出枠の価格と比べると | 順番の考え方 |
|---|---|---|
| 1,700円(下限価格)より低い | 排出枠の価格が下限価格まで下がっても、排出枠を買うより減らす方が安い | 先に進める候補にする |
| 1,700円〜4,300円 | 排出枠の価格しだいで、どちらが安いかが変わる | 設備の更新の時期と合わせて決める |
| 4,300円(上限価格)より高い | 上限価格より、減らす費用の方が高い | いまの価格の目安では急がない候補にし、上限価格と下限価格が改めて定められる毎年度に見直す |
ただし、費用だけでは順番は決まりません。設備を止めて工事ができる時期が、年に1回の定期修理に限られる工場もあります。削減策の工事を設備の更新の時期に合わせれば、まだ使える設備を早く捨てずに済みます。費用が同じくらいなら、次の定期修理や更新に間に合う削減策を先にします。
移行計画の設備投資計画の欄には、こうして並べた順に、投資の内容と金額・工場・着手と完了の時期・年間に減るCO2の量を書きます。
3. 稟議に書く回収年数を、上限価格と下限価格の2通りで出す
設備投資の稟議では、決裁する人(その投資をするかを決める人)から、回収年数を求められることが多くあります。回収年数の計算に使う、排出枠の過不足が毎年良くなる量と運転の費用の減り方は、設備を知る技術部門が出す数字です。対象の会社では、排出枠の過不足が1トン良くなると、排出枠を1トン買わずに済むか、余った排出枠を1トン売れます。どちらの場合も、その1トンの価値は、排出枠の価格です。
排出枠の価格は、排出枠を売り買いする市場で動きます。価格を1つに決めて回収年数を書くと、決裁する人は判断に困ります。実際の価格が、決めた価格からどこまで外れると、会社が決めている回収年数の限度(例えば8年以内)を超えるかが分からないからです。そこで、排出枠の価格を上限価格と下限価格の2通りで入れ、回収年数を2つ並べます。
例を示します(数字は説明のために置いた仮の値です)。ボイラーの燃料を重油から都市ガスに替える削減策を例にします。投資額が2億円、運転の費用(重油と都市ガスの燃料代の差)が年1,000万円減り、排出枠の過不足が年5,000トン良くなるとします。過去の排出量を基にする工程で、燃料の使用量(熱量)は変わらないため、この削減策のために割り当てられる排出枠が減ることはないとしました。割当てが毎年度1.7%にあたる量ずつ減る分は、削減策をしてもしなくても同じため、ここでは数えません。
| 排出枠の価格 | 1年の効果 | 回収年数 |
|---|---|---|
| 下限価格の1,700円 | 運転の費用の減り1,000万円+5,000トン×1,700円=1,850万円 | 約10.8年 |
| 上限価格の4,300円 | 運転の費用の減り1,000万円+5,000トン×4,300円=3,150万円 | 約6.3年 |
この表は、2026年度の上限価格と下限価格のまま計算しました。2027〜2030年度の上限価格と下限価格は、上で述べた決まりで毎年度定められます。技術部門は、何年分もの効果を数えるとき、2030年度までは、その決まりで毎年度の価格を置いた計算も並べます。2031年度より後の価格は決まっていないため、どう置いたかを稟議に書きます。
会社が決めている回収年数の限度が8年なら、この削減策は、排出枠の価格が1トン3,000円以上のときに限度の年数に入ります。2億円を8年で取り戻すには、1年の効果が2,500万円要ります。運転の費用の減りの1,000万円を引いた1,500万円を、排出枠の分で出す必要があります。1,500万円を5,000トンで割ると、1トン3,000円です。決裁する人は、2つの回収年数と、限度の年数に入る価格(3,000円)を見ます。そのうえで、排出枠の価格の見通しをどう置くかを判断できます。
回収年数を、効果の種類ごとに前提を分けて書く方法は、次の記事で扱っています。製造業の設備投資の判断基準|回収年数は1つの数字で出さない
まとめ
排出量取引の対象の会社は、毎年、移行計画に削減策・投資の金額・工場・時期・年間の削減量を書きます。設備投資の順番を決めるには、設備を知る技術部門の答えが要ります。
- 工場のCO2を設備ごとに洗い出し、直接の排出と間接の排出に分ける。設備ごとに、燃料と年間のCO2の量、割当ての方式、設置した年と次の更新の予定、工事ができる時期、考えられる削減策を1枚の表にする
- 削減策ごとに、1トンあたりの費用(排出枠の過不足を1トン良くする費用)を出す。2026年度の上限価格と下限価格(1トンあたり4,300円と1,700円)と比べ、工事ができる時期も合わせて順番を決める。電気に替える削減策などで割り当てられる排出枠が減るときは、その分を差し引いて数える
- 稟議に書く回収年数を、上限価格と下限価格の2通りで計算し、会社が決めている回収年数の限度に入る価格も並べて書く
設備投資の順番を決めかねているときは、製造業の技術関連テーマの外部参謀(社外から、技術が関わる判断を一緒に進める相談役)である株式会社Labz.にご相談ください。製造業の技術が分かる当社の経験者が、ほかの人に任せず自分で担当して意思決定まで一緒に進め、決めるまでの進め方が御社の部署に残るように設計しています。
いま止まっているテーマは、ありますか。
初回は、相談したいテーマと現状のお悩み、テーマの推進に掛けられる予算規模の2つを一緒に確認します。「まだ相談する段階か分からない」という状態でも構いません。
