Labz.流プロジェクト推進手法┃「管理」ではなく「推進」で、答えのないテーマを前に進める
公開 2024-01-25
私はLabz.の創業者として、富士フイルム、SOLIZE、そしてBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)という、まったく毛色の異なる企業で仕事をしてきました。それぞれの現場で学んだ長所を組み合わせるなかで、独自のプロジェクト推進手法を編み出してきました。今回は、私たちLabz.が実際に使っているプロジェクト推進手法を、包み隠さずご紹介します。
先に、この記事の結論をお伝えします。多くのプロジェクトが前に進まないのは、担当者の能力不足でも、管理の不足でもありません。「そもそも何を解くべきか」という論点(問い)が定まらないまま、作業だけを回してしまうことに原因があります。だからLabz.の推進手法は、ツールや管理表から入りません。①解くべき論点を明確にし → ②論点をタスクと判断に分解して最適な人を配置し → ③自動化できるものは徹底的に自動化する。この3つを、一枚の"地図"にして回します。
※用語注:本記事で言うプロジェクト推進とは、「決まったことを計画通りに回す(=管理)」ことではなく、「ゴールと解くべき問いを定め、正しいタスクを設計して前に進める」ことを指します。両者は似て非なるものです(次章で詳述します)。
なぜ「管理」だけではプロジェクトが前に進まないのか
世の中に出回っているプロジェクトの進め方の多くは、実は「管理」の話です。立ち上げ→計画→実行→監視→完了という5つのステップ、WBS(作業分解)、ガントチャート、進捗会議、管理ツール――。これらはとても大切で、私たちも当然使います。
しかし、答えの決まっていないテーマ――新規事業、DX、業務改革、経営課題の解決といった"上流"のプロジェクト――では、これだけでは足りません。「そもそも何を解くべきか」が曖昧なまま管理の作業に入ると、会議もレポートも、いつしか中身のない儀式になっていきます。これが「形骸化」です。
そして、もう一つ起きるのが、私が「モグラたたき」と呼んでいる状態です。一見重要そうに見えるタスクが次から次へと現れ、それを片っ端から処理しているのに、プロジェクト全体はいっこうにゴールに近づかない。終わりが見えず、メンバーは疲弊していきます。
管理(マネジメント):決まったこと(スコープ・スケジュール・タスク)を、計画通りに回すこと。
推進(ドライブ):ゴールと解くべき論点を定め、正しいタスクそのものを設計して、前に進めること。
どちらも必要です。ですが、上流のテーマでは「推進」が先にこなければなりません。正しい問いを立てないまま管理を始めると、間違ったタスクを、几帳面に管理してしまうことになるからです。
経営コンサルとPMOの「間」にある白地
なぜ、この「推進」が抜け落ちてしまうのか。それは、既存のプロジェクト支援が、大きく2つに分かれているからです。
地図にたとえると分かりやすいと思います。
経営コンサルは、「目的地(ゴール)まで連れて行ってくれるが、地図は渡してくれない」。優れた戦略や結論は出ますが、それが顧客の中に再現可能な形で残らず、支援が終わると止まってしまいがちです。
PMOは、「地図の上のタスクは管理してくれるが、目的地そのものは描けない」。進捗やリスクは丁寧に管理しますが、「そもそもどこを目指すか」の論点設計は守備範囲の外です。
※用語注:PMO(ピーエムオー/Project Management Office) は、プロジェクトの進捗・課題・リソースなどを管理・支援する役割・組織のこと。実行の管理は得意な一方、ゴールや論点の構想は担いにくい立場です。
この2つの"間"に、ぽっかりと白地が空いています。すなわち、「目的地(ゴール)を構想し、そこへの道筋を全員が見える地図にして、貴社の手に残す」という役割です。Labz.が立っているのは、まさにこの場所です。私が富士フイルム・SOLIZE・BCGで別々に身につけた力を掛け合わせているのも、この白地を埋めるためでした。
Labz.流プロジェクト推進手法の全体像──3つのコンセプト
Labz.のプロジェクト推進手法は、次の3つのコンセプトから成り立っています。そして、これらは私のキャリアで得た3つの力に、それぞれ対応しています。
コンセプト | やること | 背景にある力(経験) |
① Issue Analysis | 解くべき論点(大論点)を明確にする | 論点・仮説の立て方(BCGで培った論点思考) |
② Decision Analysis | 論点をタスクと判断に分解し、最適な担当者を配置する | 暗黙知を型として形式知化する力(SOLIZEでの経験) |
③ Process Automation | 自動化できるタスクは徹底的に自動化する | 生成AIの実装力(技術の目利きと実装) |
大切なのは、この3つをバラバラに使わないことです。3つを一本の流れとしてつなぎ、一枚の"共通地図"の上で回す。ここに、Labz.の手法の肝があります。以下、一つずつ説明します。
① Issue Analysis:解くべき論点(大論点)を明確にする
プロジェクトを始めるとき、まず何より重要なのが、プロジェクトのテーマや、解決すべき課題を明確にすることです。当たり前に聞こえるかもしれませんが、ここが曖昧なまま走り出すプロジェクトが、驚くほど多いのです。
※用語注:論点(ろんてん)とは、その課題を解くために「答えを出すべき問い」のこと。たとえば「新規事業をやるべきか?」ではなく、「どの顧客の、どの不満を、自社の何を活かして解けば、3年で黒字化できるのか?」のように、答えると意思決定が前に進む問いを指します。この一番大きな問いを大論点と呼びます。
最初にやるのは、この大論点を一つに定めることです。「このプロジェクトで、最終的に答えを出すべき問いは何か」。ここがぶれていると、以降のすべての作業が、少しずつ的を外していきます。
ただし、大論点を掲げただけでは、まだ具体的な行動には移せません。大論点は、いわば地図の「目的地」。目的地が決まっても、そこへ至る道が引かれていなければ、人は動けません。そこで次の②に進みます。
② Decision Analysis:論点をタスクと判断に分解し、最適な担当者を配置する
大論点だけでは、具体的なアクションに移しにくく、担当者も決めづらい。これがプロジェクト停滞のよくある入り口です。そこでLabz.では、大論点をさらに中論点・小論点へと分解し、最終的には「タスク」と「判断」のレベルまで落とし込みます。
ここでのポイントは、分解する単位を「作業(タスク)」だけにしないことです。「判断(意思決定)」も、独立した分解の単位として扱う。「誰が、いつ、何を判断するのか」を明確にするのです。プロジェクトが止まる原因の多くは、作業が終わっていないことではなく、必要な判断が誰にも下されないまま宙に浮くことにあります。だから私たちは、判断を"見える化"して、担当を割り当てます。
こうして論点をタスクと判断まで分解すると、それぞれの難易度や必要な工数が明確になります。すると初めて、「この判断は経営層に」「この分析は財務に強いメンバーに」「この調査は若手に」といった、最適な担当者のアサインが可能になります。
数多くのプロジェクトを見てきて、私が痛感したことがあります。それは、大論点の設定ができない、あるいは大論点を適切に分解できず、タスク設計と担当者アサインができていないプロジェクトが、非常に多いということです。その結果が、先ほどの「モグラたたき」です。一見重要そうなタスクを、手当たり次第に処理し続け、終わりが見えなくなる。
Labz.では、プロジェクトのテーマ・ご要望・課題を事前に丁寧にヒアリングし、大論点の設定 → 論点分解 → タスクと判断の明確化 → 担当者のアサインまでを、一気通貫で行います。これにより、「本当にやるべきタスク」が明確になり、最適な人がそこに配置されます。無駄な作業や手戻りが減るため、結果として、コンサルティングにかかる費用の削減にもつながります。
具体的には、次のような一本の流れで整理します。
段階 | 中身 | 例(新規事業の場合) |
大論点 | 答えを出すべき最上位の問い | この新規事業に投資すべきか、するなら勝ち筋は何か |
中・小論点 | 大論点を分解した問い | 狙う顧客は誰か/何で差別化するか/採算はいつ合うか |
タスク/判断 | 論点に答えるための作業と意思決定 | 顧客ヒアリング(作業)/参入する市場の決定(判断) |
担当 | 各タスク・判断を担う人 | 調査は企画担当/市場の決定は役員 |
この一枚があるだけで、「誰が・何を・なぜやるのか」が全員に共有され、モグラたたきから抜け出せます。
③ Process Automation:自動化できるタスクは"徹底的に"自動化する
昨今のデジタル技術、とりわけ生成AIの進化によって、これまで人が手を動かしていた多くの業務が、自動化できるようになりました。Labz.では、この流れを積極的に取り入れています。
考え方はシンプルです。人の能力や知見を最大限に活かせるタスク――すなわち、②で洗い出した「論点の見極め」や「重要な判断」――に人を集中させ、それ以外の作業は可能な限り自動化する。具体的には、資料や提案書のドラフト作成、多部署からの数値の集計、議事録の要約、進捗のリマインドといった定型的な作業が、自動化の対象になります。
ここで一つ、強調しておきたいことがあります。自動化するのは、あくまで"作業"であって、"判断"ではないということです。解くべき論点の見極めや、プロジェクトの重要な意思決定は、最後は人が担います。生成AIは、そのための材料を高速に用意し、思考を支援する強力な相棒です。AIに丸投げするのではなく、AIで作業を巻き取り、人は上流の思考に時間を戻す。これがLabz.のスタンスです。
3つが「一枚の地図」になると、何が変わるか
繰り返しになりますが、この手法の価値は、3つのコンセプトを一本の流れ=一枚の共通地図としてつなぐところにあります。論点(Issue)を、タスクと判断(Decision)に落とし、定型は自動化(Process)する。この地図が組織に残ると、次のような変化が起きます。
モグラたたきから抜けられる:本当に解くべき論点に紐づいたタスクだけに集中できる。
属人化しない(再現可能になる):進め方が地図として残るので、担当者が代わっても品質が落ちない。次のプロジェクトでも同じ型が使える。
費用・工数が下がる:無駄な作業と手戻りが消え、自動化で人手も減る。
少人数でも回る:一人ひとりが「自分が何のためにこれをやるのか」を地図で把握できる。
要するに、プロジェクト推進のノウハウを、特定の人の頭の中(暗黙知)ではなく、組織の資産(地図)に変える。これが、私がSOLIZEで学んだ「暗黙知の形式知化」を、BCGで学んだ「論点思考」に掛け合わせた理由です。
王道の5ステップやフレームワーク(PMBOK・WBS)とは、どう接続するのか
「では、PMBOKやWBSといった、既存のプロジェクト管理の手法は使わないのか?」とよく聞かれます。答えは逆で、しっかり使います。Labz.の手法は、既存の管理手法を否定するものではなく、その手前と要所を補うものです。
※用語注:PMBOK(ピンボック) はプロジェクトマネジメントの世界的な知識体系、WBS(作業分解構造) は大きな作業を細かいタスクに分解して整理する手法のこと。いずれも「決まったことを計画通りに回す(管理)」ための優れた道具です。
手前を補う:WBSは「やることが決まった後」の作業分解には強力ですが、「そもそも何を解くべきか(論点)」は扱いません。Labz.は、その手前に Issue Analysis(論点設計)を置くことで、正しい対象を分解できるようにします。
要所を補う:一般的なWBSは作業を並べますが、Labz.は各タスクに「判断」と「担当」を紐づけます(Decision Analysis)。これにより、宙に浮きがちな意思決定が前に進みます。
つまり、論点設計で正しい目的地を定め、既存の管理手法で道を舗装し、自動化で移動を速くする。これがLabz.流の全体像です。
まとめ
Labz.流のプロジェクト推進手法は、次の3つのコンセプトに基づいています。
Issue Analysis:明確な論点設定(何を解くべきかを一つに定める)
Decision Analysis:論点をタスクと判断のレベルまで分解し、人材配置を最適化する
Process Automation:徹底的なタスクの自動化(人は上流の思考に集中する)
この3つを、バラバラの技法としてではなく、一枚の共通地図としてつなぐことで、効率的かつ効果的なプロジェクト推進を実現し、お客様にとって最大の価値を提供することを目指しています。
「管理」の前に「推進」を。「作業」の前に「論点」を。プロジェクト推進の難しさ――終わりの見えないモグラたたきや、形骸化した会議――に直面している方にとって、Labz.のアプローチが、新しいヒントになれば幸いです。
株式会社Labz.の「共通地図」は、経営コンサルとPMOの"間"にある白地――明確な答えのないテーマのプロジェクト推進を、論点設計(Issue Analysis)→タスク・判断への分解と最適アサイン(Decision Analysis)→徹底した自動化(Process Automation)という一連の流れで支援するサービスです。進め方を、属人化させず再現可能な"地図"として貴社の手に残します。本サービスにご興味を持たれた方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
