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経営企画のプロが直面する課題:多忙/人手不足/スキル不足…

公開 2023-11-14

経営企画の仕事は、驚くほど多岐にわたります。中期経営計画の策定、予算の取りまとめ、市場・競合の分析、新規事業の検討、M&A、IR、部門横断のプロジェクト管理――。会社の将来を左右するテーマを次々と手がけながら、日々の資料づくりや数字の集計にも追われる。多くの経営企画担当者が、慢性的な多忙、人手不足、スキル不足という課題を抱えています。

先に、この記事の結論をお伝えします。経営企画が直面する多忙・人手不足・スキル不足は、実はバラバラの問題ではありません。その共通の根っこは、「明確な答えのない上流のテーマを扱う仕事が、特定の人に属人化していること」にあります。だから、時間管理術や研修といった"対症療法"だけでは、根本的には解決しません。

この記事では、3つの課題それぞれの原因を調査データで解きほぐしたうえで、定石となる解決策を押さえ、さらにその先にある根本的な解決策までを、経営企画・事業開発の責任者がそのまま使える形で解説します。

※用語注:経営企画とは、会社のビジョン(目指す姿)を具体的な戦略に落とし込み、その実現に向けた計画づくりから実行の推進までを担う部門のこと。「経営の参謀」とも呼ばれ、答えの決まっていない上流のテーマを扱うのが特徴です。

経営企画の日常と、多忙さの本当の原因

経営企画の役割は、会社のビジョンを具体的な戦略に落とし込み、その実現に向けた行動計画を策定・推進することです。このプロセスには、市場分析、競合調査、予算立案、プロジェクト管理などが含まれ、業務内容が多岐にわたるがゆえに、多忙さが生まれます。戦略の細部の検討から実行段階のフォローまで、幅広い役割を一手に担う必要があるからです。

その忙しさは、数字にも表れています。ある調査では、「経営企画」の求人数は2015年上半期と比べて10.0倍に増え、企画・推進を担う人材の不足感は49.9%にのぼると報告されています〔リクルート, 2024〕。会社が経営企画に期待する仕事は増え続けているのに、担い手が追いついていないのです。

ただし、経営企画の多忙さは「単に業務量が多い」だけでは説明できません。より本質的な原因は、扱うテーマの多くが「明確な答えのないもの」だという点にあります。定型的な作業と違い、「そもそも何を検討すべきか」から自分で設計しなければなりません。そこに、多部署からの数字の集計や、経営に見せる資料づくりといった手間のかかる作業が重なります。結果として、一番時間をかけたい"考える仕事(上流)"の時間が、作業に押し出されて消えていく。これが、経営企画特有の多忙さの正体です。

人手不足が経営企画に与える影響

経営企画の多忙さには、人手不足が大きく寄与しています。経営企画には、優れた計画立案力と洞察力を持つ人材が欠かせませんが、この分野の専門家は限られており、採用の競争も激しいのが実情です。転職市場では、経営企画職の平均年収は約1,000万円という調査もあり〔JAC Recruitment, 2026〕、それだけ希少で採用が難しい職種であることがうかがえます。

人手不足は、プロジェクトの遅延や品質の低下といった影響を及ぼします。そして経営企画の現場では、この痛みをさらに深刻にする要因があります。「属人化」です。

  • ある実態調査では、経営企画業務の最大の課題は「属人化」で、62.7%が課題として挙げています〔ログラス「経営企画実態調査」2021〕。

  • 同じ調査では、経営企画が実質「ひとり」で回っている企業が約22%、人員不足を感じている割合は75%にのぼります〔同〕。

属人化とは、「その人にしか分からない・その人にしかできない」状態のことです。論点の立て方も、過去の検討の経緯も、担当者の頭の中だけにある。この状態だと、一人が抜けただけで仕事が止まり、人を増やしても立ち上がりに時間がかかります。人手不足の痛みが、属人化によって何倍にも増幅されるのです。

スキル不足の現状と、その本質

経営企画は、急速に変化するビジネス環境に対応するため、最新のスキルと知識を求められます。しかし、多くの組織でスキル不足が課題になっています。実際、経営企画担当者を対象としたある調査では、最も多く挙げられた課題が「メンバーのスキル・経験不足」でした〔Speeda(ユーザベース)調査, 2023〕。

一般に、経営企画に必要なスキルとして挙げられるのは、論理的思考、財務・データの分析力、コミュニケーション力、情報収集力、実行力――といった項目です。もちろんこれらは大切です。しかし、多くの解説がここで止まってしまい、本当に足りていない中核スキルが見えにくくなっています。

それは、「論点設計」――解くべき問いを立て、答えを組み立てる力です。

※用語注:論点設計とは、「その問題を解くために、まず何に答えを出すべきか(=論点)」を見極め、構造化すること。たとえば「新規事業をやるべきか?」ではなく、「どの顧客の、どの不満を、自社の何を活かして解けば、3年で黒字化できるのか?」のように、答えると意思決定が前に進む問いを立てる技術です。

答えのないテーマを扱う経営企画にとって、この論点設計こそが仕事の質を決めます。ところが、これは経験の中で身につく"暗黙知"になりがちで、体系的に教えるのが難しい。日本全体で見ても、目的設定から効果検証までを一気通貫で担う「ビジネスアーキテクト」と呼ばれる上流人材が、最も不足していると指摘されています〔IPA「DX動向2025」〕。

継続的な学習やトレーニングでスキルを磨くことは重要です。ただし、育成には時間がかかります。「育つのを待つ」だけでは、今まさにある課題には間に合いません。だからこそ、後述する「型にして補完する」という発想が効いてきます。

3つの課題に共通する"根っこ"――上流の属人化

ここまで見てきた多忙・人手不足・スキル不足を並べると、それらを貫く一つの構造が見えてきます。いずれも「経営企画が"明確な答えのないテーマ"を扱い、その要となる論点設計が属人化していること」から生まれているのです。

  • 多忙 → 論点が個人の頭の中にしかないため、検討がやり直しになり、作業に追われる。

  • 人手不足 → 属人化しているため、一人抜けると回らず、増員しても立ち上がらない。痛みが増幅する。

  • スキル不足 → 論点設計が暗黙知のまま継承されず、育成が追いつかない。

つまり、3つの課題は別々の病気ではなく、「上流の属人化」という同じ根から出た枝なのです。ここを取り違えると、対策を間違えます。多くの現場は、時間管理術を学び、人を採用し、研修を増やそうとします。それ自体は正しいのですが、根が上流の属人化にある以上、そこに手を打たない限り、同じ課題が形を変えて戻ってきます。

症状

よくある対症療法

共通の根っこ

根本的な解決の方向

多忙

時間管理術・タスク整理

論点が属人化し、作業に時間を奪われる

論点設計を型にし、定型作業は生成AIへ

人手不足

採用・転職で埋める

属人化で一人抜けると回らない

進め方を共通地図にし、少人数でも回る

スキル不足

研修・自己学習

論点設計が暗黙知で継承されない

論点設計を再現可能な型にして補完

以下では、この表の「対症療法」(時間管理・育成)をきちんと押さえたうえで、「根本的な解決」へとつなげていきます。

解決策①:時間管理と業務効率化――ただし"何を効率化するか"から

多忙を乗り越えるには、効果的な時間管理が欠かせません。まずは定石を押さえましょう。

  • 優先順位のつけ方:仕事を「緊急度」と「重要度」で仕分けし、「重要だが緊急ではない」領域(=戦略立案や仕組みづくり)に、意識して時間を確保する。緊急対応に追われるほど、この領域が後回しになりがちです。

  • タスクと情報の一元化:プロジェクト管理ツールやコラボレーションのしくみを活用し、「誰が・何を・いつまでに」を全員が見える状態にする。属人的な口頭連絡や個人管理を減らします。

ただし、ここで一歩踏み込みたいのが、「そもそも、何を効率化すべきか」という問いです。ツールを入れても、効率化する対象を間違えれば効果は出ません。経営企画で本当に時間を生むべきなのは、「作業(資料づくり・数字の集計)」を減らし、「上流の思考(論点設計)」の時間を増やすことです。

いまは生成AIによって、定型的な資料の下書きや数字の整理・可視化を自動化し、空いた時間を"考える仕事"に振り向けることが現実的になっています。効率化の順番は、「ツール選び」からではなく、「どの論点に時間を集中すべきか」から始めるのが正解です。

解決策②:人材育成とチームワークの強化――"論点設計"を型にして共有する

人手不足に対処するには、チームづくりと人材育成の戦略が重要です。これも定石を押さえます。

  • メンターシップ:経験豊富なメンバーが若手を指導し、暗黙知を伝える機会をつくる。

  • 研修プログラム:組織内のスキル底上げを図り、チーム全体の対応力を高める。

  • チームビルディング:役割と強みを可視化し、協働しやすい関係をつくる。

そのうえで押さえたいのは、研修や個人のOJTだけでは、論点設計の力はなかなか組織に根づかないという現実です。論点の立て方が「先輩の背中を見て覚える」ままでは、育成に時間がかかり、担当者が代わるたびに品質が振り出しに戻ります。

そこで有効なのが、属人化していた「論点の立て方」や「進め方」を、目に見える"型"として共有することです。優れた検討がどんな論点から出発し、どんな仮説をたどったのか。その道筋をチームの共有資産にできれば、育成のスピードは上がり、少人数でも安定して回せるようになります。これが、次に述べる「共通地図」の考え方です。

解決策③(根本解):論点を「共通地図」にして、属人化を解く

3つの課題の根っこである「上流の属人化」に直接効く打ち手が、論点・仮説・進め方を一枚の「共通地図」として見える化し、チームで共有することです。地図に載せるのは、最低限この4つです。

  • 解くべき論点(このテーマで答えを出すべき問い)

  • 今の仮説(論点への暫定の答えと、その根拠)

  • 進め方とマイルストーン(誰が・何を・いつまでに)

  • 決定と経緯の記録(なぜそう判断したか)

ポイントは、これが担当者の頭の中ではなく、組織に残る形になっていることです。担当者が異動しても、地図と判断の記録が残っていれば、取り組みは止まりません。これが「再現可能化」――属人化を避け、誰がやっても一定の品質で進められる状態です。

そして、この地図づくりは生成AIと相性が良い領域です。論点や仮説の構造化、資料の下書き、進め方の整理をAIが支援することで、少人数でも上流の検討を速く・安定して回せるようになります(最終的な論点の見極めは人が担うことが前提です)。共通地図が組織に根づくと、次のように3つの課題へ同時に効きます。

  • 多忙 → やり直しが減り、作業は自動化され、考える時間が戻る。

  • 人手不足 → 一人が抜けても地図が残るので回る。増員の立ち上がりも速い。

  • スキル不足 → 論点設計が型として共有され、育成を待たずに補完できる。

対症療法と違い、根に効くので、課題が形を変えて戻ってきにくいのが、このアプローチの価値です。

経営企画の課題を解く3つのステップ(まとめの型)

最後に、明日から着手できる順番に整理します。

  1. 症状を"根っこ"まで分解する:多忙・人手不足・スキル不足を別々に処方せず、「上流の属人化」という共通の根に当てる。

  2. 作業を減らし、上流に集中する:定型的な資料・集計は生成AIやツールに寄せ、空いた時間と人を「論点設計」に振り向ける。

  3. 論点と進め方を"共通地図"として残す:優れた検討の道筋を型にして共有し、属人化させない。育成もチーム力も、これで底上げする。

よくある質問(FAQ)

Q. 人を増やせば、経営企画の課題は解決しますか? 採用は有効ですが、それだけでは不十分です。仕事が属人化したままだと、増えた人が立ち上がるのに時間がかかり、結局は特定の人に負荷が集中します。まず「進め方を共有できる形(共通地図)」にしてから増員するほうが、効果が高まります。

Q. ツールを導入すれば効率化できますか? ツールは手段であり、「何を効率化するか」を先に決めることが重要です。経営企画で生むべき時間は、作業時間を減らして「上流の思考(論点設計)」に充てる時間です。目的(論点)を決めずにツールを入れても、効果は限定的です。

Q. まず何から始めればよいですか? いま抱えている一番大きなテーマについて、「解くべき論点」を1〜2文で書き出してみてください。それを関係者と共有し、進め方と一緒に一枚にまとめる――この小さな「共通地図」づくりが、属人化を解く第一歩になります。

まとめ

  • 経営企画の多忙・人手不足・スキル不足は、別々の問題ではなく、「上流(答えのないテーマ)の属人化」という共通の根っこから生まれている。

  • 実態調査でも、経営企画業務の最大の課題は「属人化」(62.7%)であり、ひとり経営企画や人員不足も深刻〔ログラス, 2021〕。

  • 時間管理・業務効率化・人材育成は有効な定石だが、根に手を打たなければ課題は形を変えて戻る

  • 根本解は、論点設計を属人化させず「共通地図」として型にし、生成AIで少人数でも回せるようにすること。これは多忙・人手不足・スキル不足に同時に効く。

  • 始め方は、一番大きなテーマの「解くべき論点」を1〜2文で書き出し、進め方とともに一枚の地図にすること。

経営企画の課題は、根性や個人の頑張りではなく、「上流の属人化を解く仕組み」で乗り越えられます。まずは目の前のテーマの論点を、チームで見える形にするところから始めてみてください。

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