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株式会社Labz.
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モノ売りからコト売りへ-新規事業の立ち上げで"最初の一枚"をどう描くか(ある設備メーカーの事例)

  • 執筆者の写真: Daisuke Wakui
    Daisuke Wakui
  • 7月6日
  • 読了時間: 10分
新規事業の立ち上げで"最初の一枚"をどう描くか

「製品を売るだけの会社から、サービスで継続的に稼ぐ会社へ」。モノ売りから、コト売りへ。そう考えて動き出した瞬間、多くの企業が同じ壁にぶつかります。考えるべきことが、あまりに多いのです。顧客は誰か、何に困っているのか、どの技術を持つべきか、誰と組むのか、どの順で始めるのか……それらが複雑に絡み合い、どこから手をつければ全体が動き出すのか、見通せない。役員に「で、具体的にどう進めるの?」と問われて、スライドが白いまま言葉に詰まる――新規事業の立ち上げでは、業種を問わず、この光景が繰り返されます。

これは、私たちLabz.が実際にご支援した、ある大型インフラ設備メーカーの新規事業の話です。同社は、社会インフラを支える設備の市場で、従来の製品販売に加えてO&M(運用・保守)のサービスで差別化しようとしていました。狙いそのものは、正しい。でも、その先は真っ白でした。

先に、結論をお伝えします。突破口になったのは、特別なアイデアをひねり出したことではありません。漠然とした構想を「論点(答えを出すべき問い)」に分解し、"幅出し→絞り込み"を繰り返して、次に検証できる"事業仮説の地図"に変えたこと。これが、私たちの考える新規事業の立ち上げの第一歩です。そしてこの進め方は、業種を問いません。工作機械の従量課金サービスでも、素材メーカーの運用支援でも、同じ形で使えます。埋めるべき問いの"中身"は変わっても、"やり方"は変わらないからです。

※本記事は、実際のご支援事例をもとにしていますが、クライアント企業の特定につながる情報(社名・競合名・提携先名・具体的な事故事例など)はすべて伏せ、要点を一般化して構成しています。

支援前の状況「コト売りに挑みたい、でも"最初の一枚"が描けない」

最初にお話を伺ったときの状況は、新しい事業を始めようとする多くの現場に通じるものでした。

  • 方向性は、正しい。社会インフラの需要拡大で、この設備の市場はこれから大きく伸びる。そこに国内外から多くの企業が参入しようとしている。だから「モノ売り」だけでなく、保守・監視という「コト売り」で差別化する――狙いそのものは、筋が通っていました。

  • ところが、その先が、真っ白でした。サービスといっても、誰に売るのか。顧客は何に困っているのか。どの技術を自社で持つべきか。誰と組むのか。いつ、どの市場から始めるのか。一つひとつが、決まっていない。

  • しかも、それらは互いに絡み合っている。技術も、顧客も、競合も、パートナーも、タイミングも――一つを決めるには他が要る。この"鶏が先か卵が先か"が、着手を止めていました。

※用語注:モノ売り/コト売りとは、製品そのものを販売する事業(モノ売り)に対し、その製品を使った運用・保守・監視などの継続的なサービスを提供する事業(コト売り)のこと。O&Mは「運用・保守(Operation & Maintenance)」の略です。

「やりたい」という気持ちと、「やれる」という確信の間には、深い霧があります。私たちは、まずこの霧を晴らすことから始めました。

新規事業の立ち上げアプローチ"やりたい"を論点に分解する

私たちが最初にやったのは、いきなり事業計画を書くことではなく、「この新規事業は、結局どんな問いに答えれば形になるのか」を整理することでした。中心にある大きな問い(モノ売りに加えて、どんなコト売りを、どの技術で実現するか)を、5つの論点に分解します。

①誰が顧客か → ②その顧客の"不安"は何か → ③どのトラブルを、どの技術で解くか → ④何を自社で持ち、誰と組むか → ⑤どの順番で攻めるか。

この5つを順に埋めていくと、絡まっていた要素がほどけていきます。以下、特に効いた3つを紹介します。

① 誰の、どんな「漠然とした不安」を解くのか

新規事業でいちばん大事なのは、「誰の、どんな困りごとを解くのか」です。そこで、顧客像(その設備を保有・運用する事業者)を思い描き、社内の知見も総動員して"仮説"を立ててみると、面白いことが見えてきました。彼らは「保守が大事なこと」は分かっている。でも、"具体的に何が、どう危ないのか"が見えないから、動けないのではないか――。

これは、はっきりした「困った」ではなく、「漠然とした不安」でした。ここに、この事業の芯があります。すなわち、その見えない不安を「見える化」し、「確信」に変えてあげること。「業界のプロとして、起こりうるリスクと、それが招く損害を、具体的な言葉と数字で示す」。それ自体が、価値になります。潜在的なニーズ型の事業では、困りごとを解くだけでなく、"言葉にならない不安"を言語化して、意思決定を後押しすることが、そのまま提供価値になるのです。

② 「トラブル×データ×技術」で打ち手を構造化する(幅出し→絞り込み)

次に、「では、何を監視すれば安心を届けられるのか」を構造化しました。ここで使ったのが、"幅出し→絞り込み"という進め方です。

まず、起こりうるトラブルを、洗いざらい幅出しします(外からの衝撃による損傷、設置環境からくる想定外の負荷、接続部の劣化、部分的な異常発熱……といった数十種類)。そして一つひとつを、「何が・いつ・どこで・どんな状態になるか」→「原因」→「検知に必要なデータと使い方」→「必要な技術」の順に並べていく。こうすると、「どのトラブルを防ぐには、どの技術が要るか」が、構造として見えてきます。

そのうえで、2つのモノサシで絞り込みます。トラブルは「損害の大きさ」×「自社の強みを活かせるか」で、数十種類から十数種類へ。監視技術は「自社が差別化できるか」×「競合の状況」で、数十種類から、本当に勝負するごく少数の中核技術へ。残りは、自前で抱え込まず、外部から調達すればいい。全部を自社でやろうとしないことが、かえって勝ち筋を鋭くします。

③ 何を自社で持ち、誰と組み、どの順で攻めるか

中核技術が決まれば、次は「どう手に入れ、どう戦うか」です。技術の獲得には、大きく4つの型があります。

技術獲得の型

ひとことで言うと

総合網羅型

主要技術を全部自社で。「全部できる総合力」で勝つ(ただし力が分散しがち)

コア技術特化型

本丸の技術だけを深掘りし、「この技術ならこの会社」を狙う(短期の売上は捨てる覚悟)

需要獲得最優先型

まず市場参入・認知を優先し、調達・提携で今の需要に最速で応える(差別化は弱い)

コア技術特化×需要獲得ハイブリッド型

本丸の技術を育てつつ、他社と組んで早期に実績も取る"両輪"(今回はこれ)

この会社が選んだのは、両輪の型でした。本丸の中核技術は自社で深く育てる。それ以外は、パートナーと組んで早く市場に入る。パートナーも、「自社の強み(コア)は自分で持ち、それ以外(非コア)は任せる」という切り分けで設計します。

進め方の軸は、シンプルです。実績が先、拡大は後。まず、確実に案件が立つ"入口"の市場に、いまある構成でもいいから入って、実績を作る。そこで信用と現場データを得てから、本命の大きな市場へ本格展開し、さらに先の市場へと、3つの波で広げていく。そして、技術の獲得は、案件が始まる約1年前に置く。慌てて全部そろえるのではなく、必要になる少し前に、必要なものを手当てする段取りです。

支援の成果――真っ白な構想が、"動ける地図"になった

新規事業でいちばんの難所――その"最初の一枚"を描き終えたとき、真っ白だった構想は、次に動ける一枚の地図に変わっていました。

  • 誰に、どんな価値を届けるかが定まった:顧客の"漠然とした不安"を見える化して、確信に変える監視サービス。

  • 何で戦うかが絞れた:全部ではなく、自社が差別化できる中核技術に集中し、残りは外部と組む。

  • どう広げるかの順番が描けた:入口の市場で実績を作り、本命へ。技術獲得は案件の約1年前に。

そして何より、この一枚をもとに、同社は「次の検証段階へ進む」という意思決定にたどり着きました。きれいな資料が1枚増えたのではありません。経営に投資を諮り、社内外の関係者を巻き込むための"共通の土台"ができたのです。

※用語注:新規事業は、いきなり大きく作らず、「仮説を立てる → 顧客に当てて検証する → 実現性を確かめる → 立ち上げる」という段階を踏み、各段階に関門(次に進んでよいかの判断)を設けて慎重に進めるのが定石です。今回はその最初の段階=事業仮説の立案にあたります。

大切なのは、私たちが"完成した答え"を置いていったのではない、ということです。これはあくまで事業仮説――「たぶんこうだ」という筋のいい仮説です。次は、それが本当に刺さるかを、顧客や関係者に当てて確かめる段階(価値検証)へ進みます。

ここで一つ、この先の壁の"解き方"も紹介します。膠着は、こちらから"仮の一枚"を差し出して解く。潜在ニーズ型の新規事業では、「顧客も"何があれば動くか"を言い切れず、こちらも"何を出せるか"を言い切れない」という、鶏と卵のにらみ合いが起きます。相手の一歩を待つのではなく、自社の側で「これを入れれば、リスクはこう減る」というビフォー・アフターを仮に置いて差し出し、反応を確かめる。この検証の段階にも、私たちは伴走していきます。

この事例と「共通地図」――"漠然"を"確信"に変える、同じ形の営み

改めて振り返ると、私たちがやったことの本質は、奇抜なアイデアを出したことではありません。「何から考えればいいか分からない」という構想を、論点に分解し、幅出しと絞り込みで、誰の目にも見える一枚の地図に変えたこと。この一連の流れそのものが、価値でした。

そして、面白いことに気づきます。私たちがこの会社のために行ったこと――漠然とした構想を、見える化して、動ける確信に変える――は、この会社がこれから顧客に届けようとしている価値――顧客の漠然とした不安を、見える化して、確信に変える――と、同じ形をしていたのです。霧を、地図に変える。それが、両者に共通する仕事の芯でした。

これは、私たちの事業「共通地図」そのものです。世の中の支援は、大きく2つに分かれています。経営コンサルは「答えは出すが、やり方は社内に残らない」。PMOは「決まった作業は管理するが、"そもそもどこを目指すか"は描けない」。今回、"そもそも、どんな事業で戦うのか"を描くところまでは、形にしました。同じ地図の上で、決めた監視や実装を"実行として管理し、伴走する"のが、次の段階です。私たちは、その"描く側"と"回す側"を、一枚の地図でつなぎます。

※用語注:PMO(Project Management Office)は、プロジェクトの進捗・課題・リソースを管理・支援する役割・組織。実行の管理は得意な一方、「そもそもどこを目指すか」の構想は担いにくい立場です。

正直に、段階もお伝えします。本事例で私たちが実証したのは、漠然とした構想を論点に分解し、"動ける仮説の地図"に変える、思考の品質の部分です。共通地図は、その先――この地図を生成AIで属人化させず、更新・再現できる資産として貴社に残すこと、そして続く検証・実行に伴走することまでを射程にしています。事例が形になったのも、単体の力ではありません。"どこが勝ち筋かを見立てる力" ×"複雑な要素を、誰もが見える形に整理する力" ×"その地図を、属人化させず貴社が再現できる形に落とす力(生成AIで支えます)"――この掛け算があってこそでした。「魚を渡す」のではなく、「魚の釣り方の地図を、AIで描いて渡す」。

そして大事なのは、この進め方が新規事業に限らないこと。事業戦略、業務改革、DX(デジタル化による事業変革)――「何から手をつければいいか分からない」上流のテーマであれば、同じ形で効きます。新規事業は、その一例です。

まとめ――新規事業の立ち上げは、"地図づくり"から

新しい事業を始めたいのに前に進めないとき、私たちはつい「良いアイデアが足りない」「決め手がない」と考えます。けれど、この事例が示しているのは、壁の正体はアイデア不足ではなく、"やりたい構想が、まだ論点に分解されていないこと"だということです。

  • 「やりたい」を、答えるべき問い(論点)に分解する。全体像は、そこから見えてくる。

  • 幅出し→絞り込みで、勝ち筋を鋭くする。全部やろうとしない。

  • 完成した答えではなく、"検証できる仮説の地図"を残す。段階を追って、確かめながら進む。

「モノ売りから、コト売りへ」。「新しい事業を、なんとか形にしたい」。もしそう思いながら足踏みしているなら、足りないのはアイデアではなく、まだ描かれていない一枚の地図なのかもしれません。

株式会社Labz.の「共通地図」は、経営コンサルとPMOの"間"にある白地――明確な答えのない上流テーマ(新規事業・事業戦略・業務改革・DXなど)のプロジェクト推進を、論点設計から、生成AIで再現できる"地図"づくりまで支援し、その後の検証・実行にも伴走するサービスです。 「うちも新しい事業をやりたい、でも最初の一歩が描けない」――もしそう感じられたら、まずは30分、その構想をお聞かせください。売り込みではなく、"どこに霧がかかっているのか"を、一緒に見立てるところから始めます。


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